2014/08/12

朝日新聞「慰安婦」報道の検証をめぐる一連の報道に抗議し訴えます

http://wam-peace.org/wp/wp-content/uploads/2014/08/2014_0810_wam_youseibun.pdf


要請文
 
朝日新聞「慰安婦」報道の検証をめぐる一連の報道に抗議し訴えます

 朝日新聞は8月5日・6日の朝刊で、これまでの「慰安婦」報道の検証結果を発表しました。一部のメディアやネット上に、「『慰安婦』問題は朝日新聞の誤報・捏造によって作られたもの」という中傷や批判があることへの反論です。
特集記事では、故吉田清治氏による強制連行の証言は虚偽として記事を取り消し、「慰安婦」と「女子挺身隊」を混同した誤用を認め、取材記者による事実の歪曲を否定しました。「強制連行」に関しては、朝鮮半島や台湾に限れば「軍による強制連行を直接示す公的文書」は見つかっていないが、他の地域には証拠もあること、問題の本質は軍の慰安所で女性たちが自由を奪われ、意に反して「慰安婦」にされたという強制性にあることだとしています。
 これらの内容は、「いまさら…」と嘆息したくなるほど、日本軍「慰安婦」問題を少しでも知る者たちには常識となっていることばかりです。このような検証なら、もっと早くに行ってもよかったのに…と思いましたが、事実確認も検証も全く行わずに暴論と虚報を垂れ流している産経新聞などの一部メディアが跋扈している現状を考えれば、朝日新聞の姿勢と自己批判は真っ当で、意義あるものと言えるでしょう。ただ、朝日新聞が相変わらず「女性のためのアジア平和国民基金」を評価していることには、失望を禁じえません。「国民基金」による負の影響をもっと学ぶべきです。そして、「慰安婦」被害を朝鮮半島に極小化し、問題を矮小化しようとしてきた日本政府の“下心”にも迫ってほしいと願わずにはいられません。

 ところがこのような朝日新聞の検証記事を受けて、一部のメディアや政治家たちが、これを政治利用しようと動き出しました。彼らは朝日新聞の報道が全部間違いであり、「慰安婦」被害という戦争犯罪に当たる歴史的事実までなかったような言い方をしています。朝日新聞の報道が日韓関係を悪化させ、国際緊張を招いたと言わんばかりです。
 自民党の石破茂幹事長は国会での検証まで言い出しました。これはまさに報道の自由への国家介入にあたります。橋下徹大阪市長は「産経が頑張って、朝日が白旗あげた」と大はしゃぎで、「国家をあげて強制連行をやった事実がなかったことがほぼ確定した」などと述べました。彼らは白を黒と言いくるめるつもりなのです。恥ずかしげもなく、何と犯罪的なことをしようとするのでしょう!日本国内では言いたい放題の彼らの滅茶苦茶な暴論は国際社会では全く相手にされず、ただ危険視され蔑まれるだけだということに、まだ気がついていないようです。
 彼らは、10代から20代の頃に慰安所に監禁され、毎日数人から数十人もの日本兵に強かんされ続けた女性たちの残虐な被害と、半世紀を経て勇気を持って名乗り出、日本政府に対して裁判を起こし、謝罪と賠償を求めて立ち上がった彼女たちの存在を一顧だにしないのです。
 被害女性の国籍は10ヶ国以上に上ります。開館から9年が経つアクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam)では、1年ごとに各国・各地の被害を伝える特別展を開いてきました。展示の中心は、被害女性たちひとりひとりの被害と人生を伝える個人パネルです。これらの個人パネルを読んでいくと、あまりにも深い傷跡とそれをも乗り越えた女性たちの勇気と決断に心打たれると同時に、戦争が終わってから69年、被害女性が名乗り出てから20年以上も経つというのに、被害者の訴えに耳を傾けないできてしまった日本政府の非情さと犯罪性を痛感せざるをえなくなります。

 私たちは日本政府に訴えます。今、求められているのは「河野談話の作成過程の検証」ではなく、日本軍「慰安婦」制度についての第3次政府調査です。第2次調査以降、慰安所の設置や運営、「慰安婦」の移送などについて、研究者や市民によって膨大な数の公文書や証拠文書が発掘されています。これらの検証と、聞き取り調査が進められてきたアジア各国の被害者の証言と目撃者や元兵士の証言を収集し、「慰安婦」制度の実態について更なる真相究明を行うべきです。高齢となった被害女性への聞き取りは、今が最後の機会になるでしょう。
 この7月にジュネーブで開かれた国連の自由権規約委員会は、「慰安婦」問題(「慰安婦」に対する性奴隷慣行)について日本政府に対し、以下のような所見を出しました。
14. 委員会は、締約国が、慰安所のこれらの女性たちの「募集、移送及び管理」は、軍又は軍のために行動した者たちにより、脅迫や強圧によって総じて本人たちの意に反して行われた事例が数多くあったとしているにもかかわらず、「慰安婦」は戦時中日本軍によって「強制的に連行」されたのではなかったとする締約国の矛盾する立場を懸念する。委員会は、被害者の意思に反して行われたそうした行為はいかなるものであれ、締約国の直接的な法的責任をともなう人権侵害とみなすに十分であると考える。委員会は、公人によるものおよび締約国の曖昧な態度によって助長されたものを含め、元「慰安婦」の社会的評価に対する攻撃によって、彼女たちが再度被害を受けることについても懸念する。委員会はさらに、被害者によって日本の裁判所に提起されたすべての損害賠償請求が棄却され、また、加害者に対する刑事捜査及び訴追を求めるすべての告訴告発が時効を理由に拒絶されたとの情報を考慮に入れる。委員会は、この状況は被害者の人権が今も引き続き侵害されていることを反映するとともに、過去の人権侵害の被害者としての彼女たちに入手可能な効果的な救済が欠如していることを反映していると考える(2 条、7 条、及び8 条)。

国際社会が問題視しているのは暴力的な連行の有無ではなく、「被害者の意思に反して行われた」行為なのです。上の文章に続く、日本政府への6項目の勧告(「慰安婦」被害の訴えについての捜査と加害者処罰、完全な被害回復、証拠の開示、教育、公的な謝罪表明と国家責任の認知、被害者の侮辱や事件の否定への非難)もたいへん厳しいものです。しかし、日本は規約の締約国として勧告を順守する努力義務があります。アジアの被害国だけでなく、世界中がこの戦争犯罪の実態を知るに至り、一向に問題解決に乗り出そうとしない日本政府、むしろ問題そのものを否定したがっている日本政府に厳しい目を向けています。新しい調査の結果をもとに、これら勧告にしっかりと対応してください。

 そして朝日新聞、産経新聞も含めた全てのメディア関係者に訴えます。各国・各地で「慰安婦」にされた女性たち(多くは故人になってしまいましたが)の証言や被害にあった時の状況を、今からでも遅くはないですから丹念に取材し、それをメディアを通して多くの日本人に伝える努力をしてください。また、自由権規約委員会をはじめとする国際社会の勧告に、日本政府がどう対応するのか、これもしっかり取材して、私たちに伝えてください。

 日本政府も日本人も日本のメディアも、「慰安婦」問題をタブー視して避けて通ろうとしたり、歴史修正主義者たちのでたらめな暴論を許したり、沈黙したりすることが許されなくなってきました。今こそ私たちは、未解決の戦争被害である日本軍「慰安婦」問題に、真正面から真摯に向き合わなければなりません。

 2014年8月10日
アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam)

アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam)から転載


36万人の福島の子どもたちの命と健康を守るため、全国の力でみんなの拠り所となる診療所を建設しよう

福島診療所建設委員会

36万人の福島の子どもたちの命と健康を守るため、
全国の力でみんなの拠り所となる診療所を建設しよう

 子どもたちを放射能から守るたたかいに心を寄せるみなさんに、福島の地に命の拠り所となる診療所を建設する運動へのご支援、ご協力を心から訴えます。
 福島第1原発事故は、広島型原爆168発分もの1万5000テラベクレルのセシウム137がまき散らされるなど、チェルノブイリ原発事故をはるかに越える深刻な事態となっています。
 警戒区域、計画的避難区域などから避難している12万人、自主避難の6万人が家や生活の糧を奪われ、県内の36万人の子どもたちが生活し、遊び、学んでいる地域の75%が、放射線管理区域(毎時0.6マイクロシーベルト)を越える放射能汚染地域となっています。すでに原発周辺から避難した子どもたちの尿からセシウム134、137が検出されるなど、子どもたちの放射線被ばく、とりわけ内部被ばくは重大な問題です。一刻も早く、すべての子どもたちを放射能汚染地域から避難させる必要があります。
 しかし、政府が避難の権利とその補償を拒む中で、子どもたちの被ばくを心配しながらも、経済上のことなどで福島での生活を続けざるをえないのも労働者の現実です。山下俊一福島医大副学長などの「年間100㍉シーベルトまでは安全」、「内部被ばくは心配ない」などという言葉を、だれも信じてはいません。
 だからこそ福島の母親たちは、文科省に押しかけ、経産省前に座り込み、子どもたちの命と未来を守るためにたたかっています。それは9月19日の明治公園の6万人の反原発の行動となり、全国、全世界へと広がっています。すべての原発をただちに止め、福島の子どもたちの命を守る行動をともに起こしていきましょう。

 今、福島で切実に求められているのは、心と健康の拠り所となる診療所建設です。
 福島の子どもたちは放射能汚染による被ばくに日々さらされ、心身ともに息苦しい状況を半年以上も強いられています。お母さんたちの心配も、除染で取り除かれるわけではありませんし、子どもたちをモルモットのように扱う医療機関などとても信頼することはできません。今このときに、「ひょっとしたら放射能の影響では?」と不安になったとき、すぐに相談できる診療所が身近にあればどれほど心強いことでしょう。
 チェルノブイリの子どもたちには、甲状腺肥大とホルモン異常、貧血、頭痛、心肺機能の低下、免疫低下、加齢化の加速的進行、そしてガンの発症など、放射能被ばくによる様々な疾病が報告されています。

 これまでの近代医学の概念を越えた幅広い総合的な取り組みが必要となります。
 予防医学の原則に立ち、人間本来の自然治癒力を促す代替医療をも視野に入れた総合医療と、防護を念頭においた食卓、暮らしの見直しなど、いわば「生活革命」をも提案できる開かれた場が不可欠でしょう。
 診療所建設は決して簡単なことではありませんが、全国のみなさんの力をひとつにできれば絶対に実現できます。

 実際に、広島、長崎の被爆者は、医療も生活も切り捨てられるなかで「人間をかえせ」の声をあげ、たたかうことで自らの命を守り、医療を取り戻してきました。
 広島市の高陽第一診療所がその一つです。1970年、広島で二十歳前後の青年が相次いで白血病を発症しました。彼らは被爆者の父母をもつ被爆二世でした。強い衝撃を受けた被爆二世の青年たちは、自らの力で拠り所となる医療施設をつくろう、と運動を開始し、1972年にプレハブ建ての高陽第一診療所が建設されます。
 この運動をともに支えた被団協の故小西ノブ子さんは、高陽第一診療所を「被爆者の心の窓」と語られています。同じく協力された大江健三郎さんは、「そこには、あきらかな、実践的なるものと、教育的なるものとの、『生命、生き抜くこと』をめざしての融合がみられた。」と、当時の新聞に著しています。それから40年、高陽第一診療所は多くの人々の生き抜くことの拠り所となってきました。
 まさに生き抜くために、このような診療所が今の福島には必要です。全国の医師、医療関係者をはじめ、全国の力を合わせて必ず実現しましょう。
 未来をつくる子どもたちが、被ばくを心配して生きなければならないことなど、絶対にあってはなりません。安心して集い、何でも相談できる診療所をつくることは、みんなの団結で命を守り、医療を取り戻すたたかいであり、すべての原発をただちに停止、廃炉にし、原発も核もない社会をつくる運動そのものです。

 福島の子どもたちの命と心の拠り所となる診療所建設のために、基金運動へのご協力はじめ、多大なご支援などをいただきますよう重ねて心から訴えます。

2011年12月1日

わたしたちが呼びかけます
●福島から
 清野 和彦(元福島県教職員組合委員長)
 佐藤 幸子(NPO法人理事長)
 椎名千恵子(未来を孕む女たちのとつきとおかのテント村行動)
 橋本 光一(国労郡山工場支部書記長)
 市川 潤子(ふくしま合同労組委員長)
 鈴木光一郎(酪農家、ネットワーク「ゆい」福島)
 佐々木信夫(桜の聖母短期大学名誉教授)
 渡辺  馨(福島県労働組合交流センター代表)
●全国の医師から
 吉田 良順(広島高陽第一診療所所長)
 杉井 吉彦(本町クリニック院長)
 松江 寛人(がん総合相談センター所長)
 吉本 哲郎(熊手町クリニック院長)
 末光 道正(八尾北医療センター院長、八尾市議会議員)
 布施 幸彦(館林厚生病院医師)

URL: http://www.clinic-fukushima.jp/

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